本田路津子は両親が敬虔なキリスト教徒で、旧約聖書の「ルツ記」に由来する、その名前からしてユニークな存在です。桜美林大学在学中の1970年9月に、ハルミラフォークコンテストでジョーンバエズの「シルキー」を歌い、その場にいた小室等の紹介によりCBSソニーから「秋でもないのに」でデビュー。「風が運ぶもの」「一人の手」などのヒットを放ち、森山良子に続く美声の、女性フォークシンガーとして活躍します。いい意味で性的な匂いを感じさせない、折り目正しいボーカルスタイルで、清潔感あふれる高音域の美しさには、特筆すべきものがあります。
NHKの朝ドラ「藍より青く」の主題歌となった、「耳をすませてごらん」のヒットで一般的にも親しまれますが、1975年に結婚引退し渡米します。キリスト教に帰依し、1988年の帰国以降はゴスペル・シンガーとして教会コンサートなどで活躍します。
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秋でもないのに
CBSソニー
1971年
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ファーストアルバムはデビュー曲(1)のほか洋邦のフォークカバーを収録。山上路夫=加藤和彦の(3)(4)の清潔感はもとより、キャッスル&ゲイツの(10)やフォーセインツの(11)といったカレッジフォークからビートシンガーの(2)のような反戦フォークも取り入れています。本田自身が訳詞した(5)は、トルコの社会派詩人ナーズム・ヒクメットの原詩で、プロテスタントソングとして原水禁運動集会や歌声喫茶で盛んに歌われたものです。
1. 秋でもないのに
2. 一人の手
3. 野に咲く花
4. 小さな丘の小さな家
5. 死んだ少女
6. 風がはこぶもの
7. 誰もいない海
8. 遠い世界に
9. 白い色は恋人の色
10. おはなし
11. 小さな日記
12. 今日の日はさようなら
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家路
CBSソニー
1971年
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全曲オリジナルで構成されたセカンドアルバムです。山上路夫が構成と、10曲の作詞を担当しコンセプチュアルな作りをしています。表題曲(1)は、シングル発売され、渋谷毅による流麗なラウンジミュージックや、アンドレカンドレ(井上陽水)作のセンチメンタルなメロディーが美しい(3)、元MFQの麻田浩の詞曲によるカントリータッチの(9)など、どれもクリアーで、土臭さのないボーカルを活かしています。特に石川鷹彦作曲の(11)での、澄み切ったハイトーンは魅力的です。
1. ある朝生まれて
2. ままごとの世界
3. 春が来ると
4. 希望の国
5. 孤独な少女
6. 陽は昇る
7. 家路
8. 恋する瞬間
9. どうしているの
10. あの想い出の道
11. 一年たちました
12. 出発のある人生