五つの赤い風船は誤解を受けやすいグループです。まず最初に、あまりに有名な「遠い世界に」の曲だけが彼らの全てではありません。この曲のイメージだけで彼らを語ることは不可能ですし、冒頭に言った誤解も招きかねません。それは「パフ」だけでピーターポールマリーを語るようなものです。メルヘンチックで優しいだけでなく、アバンギャルドでフリーキー。
また実験性に富んでいて、至る所に良い意味で毒の隠されたグループです。このグループは1967年に結成されました。中川イサト、藤原秀子らが在籍していたウインストンズに、西岡たかしが加わる形でスタートしました。初期には、まだ中学生だった有山じゅんじもグループに参加していたことがあります。1969年にURCレコードから高田渡とのスプリットアルバム「高田渡/五つの赤い風船」が発表されます。
その時のメンバーは西岡たかし、中川イサト、藤原秀子、長野隆の4人。珍しくグロッケンシュピールやヴィブラフォンを使っています。このアルバムには「恋は風に乗って」「血まみれの鳩」「遠い空のかなたに」「遠い世界に」など、初期の風船の重要なレパートリーはすべて収められています。その後、オリジナルメンバーの中川イサトが脱退。代わりに東祥高が加入します。東はのちにシンセサイザー奏者の先駆となってゆきます。彼の音楽的な才能が加わったこともグループにとっての大きな助けとなってゆきます。
URCレコードでは「おとぎばなし」(1969年)、「OLK脱出計画」(1970年)、「五つの赤い風船インコンサート」(1970年)などのアルバムをリリースしてゆきます。「インコンサート」は当時のライブ光景をよく伝えています。彼らのステージには独特の空気が流れていました。それはアンダーグラウンドといな雰囲気といってもいいものでした。次に何が出るかわからない、即興性を帯びていました。
演奏者たちは自由に楽器を持ち換え、ふとマイクの前に立ち絶妙のコーラスを聴かせます。これが五つの赤い風船の特徴でした。「New Sky」「Flight」になると、ビートルズの「ホワイトアルバム」にも匹敵するほどの実験性を帯びます。「New Sky」の中の「時々それは」はアナログアルバム片面すべてを使った23分強の長尺曲。まるで点描画のように情景を自分たちの色合いで自由に染め上げてゆきます。
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おとぎばやし
URC 1969年
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最初が高田渡とのスプリットアルバムだったので、この「おとぎばなし」が実質的なデビューアルバム。ジャケットはメルヘンチックですが、実験性の高い作品に仕上がっています。諧謔に満ちた反戦歌の「まぼろしのつばさと共に」。幻想的でプログレッシブロックにも通じる「おとぎななしと聞きたいの」。さまざまな面があり、一筋縄ではいかないグループではありました。
1. 私は深い海にしずんだ魚
2. 青い空の彼方から
3. 貝殻節
4. めし屋
5. 一滴の水
6. まぼろしのつばさと共に
7. 叫び
8. 時計
9. まるで洪水のように
10. 母の生まれた街
11. おとぎばなしを聞きたいの
12. 唄
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五つの赤い風船 インコンサート
URC 1970年
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アルバムでは徹底的なまでに実験を繰り返すのが彼らでありました。その意味で「遠い世界に」「もしも僕の背中に羽がはえてたら」「血まみれの鳩」など、ベスト集成的な要素もあります。ライブでこれだけの事ができてしまう演奏能力の高さには驚かされます。と同時に西岡たかしの独特の雰囲気をもったMCが楽しめるアルバムです。
1. これがボクらの道なのか
2. 遠い世界に
3. まぼろしの翼とともに
4. もしも僕の背中に羽根が生えてたら
5. いやなんです
6. 夢みる女の子
7. 一番星見つけた
8. 遠い空の彼方に
9. からっぽの世界
10. 母の生まれた街
11. 血まみれの鳩
12. 唄